物理学実験
2006年

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科目のねらい

良き医療人を目指す準備教育においても,自らの身体と頭脳で体験する 実験・実習は貴重であり,欠かせない.この実習の内容は「物理現象と 物質の科学」の一部として,学生自身が自然に問いかけ,測定し,結果を 考察するという体験を通して,物質や現象に理解を深めることを目指している. 一般目標は次の通り.

物理現象と物質の性質,物質間の相互作用に関する基本法則を学ぶ. 物質の成り立ち,原子・分子,化学結合,化合物などを理解する. さまざまな物理現象が,物体の物体の力学的な運動に起因することを 学ぶ.振動と波動現象の特徴と,光と音の基本的性質を学ぶ. さまざまな電磁現象を学び,それらが一組の基礎方程式によって 統一的に記述できることを学ぶ.物質のマクロな性質,物質間の 相互作用,エネルギーと物質の相互作用について学ぶ.

学生へのメッセージ 実習は各自行うので,欠席をしないよう心掛けると共に,実習に取り組む 姿勢が重要であることを念頭に臨んでほしい.
  実験項目 実験内容・到達目標
1 固体の密度 固体をつるしたバネの伸びは,固体の質量に比例する.また,この固体を 水中に入れると固体が受ける水の浮力は,固体の体積に比例する. このことから,固体の単位体積当たりの質量,すなわち, 固体の密度を測定する.
2 電位差の測定 人体や生物中には,細胞の膜電位などの電位差が存在する.この実験では, 生理的食塩水などを電解液として,異種金属を用いた化学電池を作り, その起電力を電位差計の原理を用いて測定する.その原理は, 起電力と抵抗線の電位降下とをつり合わせ, 標準電池の起電力と比べる比較法である.
3 電流・電圧の測定 電荷の流れを電流といい,電流は電位の高い方から低い方へ流れる. この電位の差を電圧という.同じ電圧をかけても少しの電流しか流さない 導体は電気抵抗が大きいという.電流と電圧を測定し,電気抵抗を求める.
4 液体の流れ 液体が流れるとき,粘性の影響をうける.水平な円管を流れる液体の 流量から,粘性係数を測定する.
5 等電位線 黒模造紙上にとった2電極間にある等電位の場所を記録する.
等電位線が引けたら,等電位線に直交するように電気力線を描く.
6 応力分布 光は振動面が進行方向と垂直な横波である.
初めの偏光板から出た偏光の振動面は,ひずみの生じた透明樹脂板の内部 で分離する.これをもう一枚の偏光板を通して観測し, 引張応力と圧縮応力の分布図を描く.
7 ヤング率 2つの支点で水平に支えた金属棒の中点のたわみを測定し,弾性体の ひずみと応力の関係や材質のヤング率を計算する.
8 確率試行 医歯学の研究や診断に利用されるRI(ラジオアイソトープ)の核崩壊は確率過程 の例である.このモデルとして,多数の硬貨やサイコロを投げて確率過程をつくり, 半減期の意味や自然界に現れる指数関数的減少過程を理解する. また,片対数グラフの利用法を修得する.
9 音声の波形 音や声の音色(ねいろ)の違いをオシロスコープの画面での波形の違いとして 観測する.また,音声の高さは振動数の大きさに関係するが,どんな複雑な 波形も,基本の振動数とその整数倍の振動数の純音の重ね合わせとして 表せることを知る.
10 電磁誘導 磁石の回転でコイルの磁束を変化させ,コイルに生じる起電力の 周期を測定してファラデーの電磁誘導の法則を説明する.
11 電流の磁場 電流の近くでの磁針の振れから磁場の強さを測定し,アンペールの 法則や磁場のガウスの法則を説明できる.
12 光の干渉 回折格子にレーザー光をあて,干渉縞を観測する.干渉縞より, レーザー光の波長を計算する.