物理現象と物質の科学(実験篇)
2002年〜2005年

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科目のねらい

良き医療人を目指す準備教育においても,自らの身体と頭脳で体験する 実験・実習は貴重であり,欠かせない.この実習の内容は「物理現象と 物質の科学」の一部として,学生自身が自然に問いかけ,測定し,結果を 考察するという体験を通して,物質や現象に理解を深めることを目指している. 一般目標は次の通り.

物理現象と物質の性質,物質間の相互作用に関する基本法則を学ぶ. 物質の成り立ち,原子・分子,化学結合,化合物などを理解する. さまざまな物理現象が,物体の物体の力学的な運動に起因することを 学ぶ.振動と波動現象の特徴と,光と音の基本的性質を学ぶ. さまざまな電磁現象を学び,それらが一組の基礎方程式によって 統一的に記述できることを学ぶ.物質のマクロな性質,物質間の 相互作用,エネルギーと物質の相互作用について学ぶ.

学生へのメッセージ 実習は各自行うので,欠席をしないよう心掛けると共に,実習に取り組む 姿勢が重要であることを念頭に臨んでほしい.
実験項目 実験内容・到達目標  
固体の密度 固体をつるしたバネの伸びは,固体の質量に比例する.また,この固体を 水中に入れると固体が受ける水の浮力は,固体の体積に比例する. このことから,固体の単位体積当たりの質量,すなわち, 固体の密度を測定する.
電流・電圧の測定 電荷の流れを電流といい,電流は電位の高い方から低い方へ流れる. この電位の差を電圧という.同じ電圧をかけても少しの電流しか流さない 導体は電気抵抗が大きいという.電流と電圧を測定し,電気抵抗を求める.
半導体ダイオード 交流は,周期的に向きが反対になる電流であり,ブラウン管オシロスコープ の画面では正弦波形に見える.
ダイオードは,電子が過剰なn型半導体と電子が不足したp型半導体を接合 したもので,これに交流を流すと,一方向の電流だけ取り出され,整流される ことを観測する.
音声の波形 音や声の音色(ねいろ)の違いをオシロスコープの画面での波形の違いとして 観測する.また,音声の高さは振動数の大きさに関係するが,どんな複雑な 波形も,基本の振動数とその整数倍の振動数の純音の重ね合わせとして 表せることを知る.
電位差の測定 人体や生物中には,細胞の膜電位などの電位差が存在する.この実験では, 生理的食塩水などを電解液として,異種金属を用いた化学電池を作り, その起電力を電位差計の原理を用いて測定する.その原理は, 起電力と抵抗線の電位降下とをつり合わせ, 標準電池の起電力と比べる比較法である.
確率試行 医歯学の研究や診断に利用されるRI(ラジオアイソトープ)の核崩壊は確率過程 の例である.このモデルとして,多数の硬貨やサイコロを投げて確率過程をつくり, 半減期の意味や自然界に現れる指数関数的減少過程を理解する. また,片対数グラフの利用法を修得する.
原子スペクトル 原子が放電で出す光は,元素に特有な線スペクトルになる.これと 原子の中の電子の軌道との関係を説明できる.
液体の流れ 液体が流れるとき,粘性の影響をうける.水平な円管を流れる液体の 流量から,粘性係数を測定する.
棒の曲げ 2つの支点で水平に支えた金属棒の中点のたわみを測定し,弾性体の ひずみと応力の関係や材質のヤング率を計算する.
応力分布 光は振動面が進行方向と垂直な横波である.
初めの偏光板から出た偏光の振動面は,ひずみの生じた透明樹脂板の内部 で分離する.これをもう一枚の偏光板を通して観測し, 引張応力と圧縮応力の分布図を描く.
電磁誘導 磁石の回転でコイルの磁束を変化させ,コイルに生じる起電力の 周期を測定してファラデーの電磁誘導の法則を説明する.
電流の磁場 電流の近くでの磁針の振れから磁場の強さを測定し,アンペールの 法則や磁場のガウスの法則を説明できる.